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第三話

作家性の強い世界だからこそ、
まったく違う方向のことをやりたい。

陶芸を始めて間もない頃、京都でお店を始めるという友人が、ぼくの作った陶芸をたまたま見て「ちょっと面白いから販売させて」と言ってくれた。お店に置かれると、友達の友達から買ってくれるようになった。その後も時々注文が入り、求められるまま器づくりを続けていった。

デコボコの器を見ると、最初はみんなびっくりしていた。ちょっと半笑いだったりもする。その反応がおもしろくて、なんかすごいワケわかんないもんつくれてるという感覚があり、自分でも笑えた。

当時、手びねりの作品は今ほど多くなく、きっと実際あったはあったのだろうけれど、それこそ素人陶芸のようなもので、作品として表に出てこないという中で、それを大真面目にやってる人があまりいなかったこともあり、この面白さが理解されるにはどうすればいいのかを、自分なりに考えてみることにした。

個人名は出さず「SHOKKI」というセラミックレーベルとした。ファッションブランドのようにシーズンのコレクションとして発表してみたり、いろんなブランドとコラボレーションをしたりした。100%受け入れられたい、と思っているわけではなく、あくまで遊びの感覚だった。

まだ映像とか写真とか、美術の方が、自分のオリジナルだと思っていた。ただ陶芸がなんとなく評価されて、ちょっといい流れに乗れてきていたことに、ちょっと抵抗を覚えたりもしていた。

そんなある日、こんなことがあった。

通っていた陶芸工房で年に一度「うぶごえ展」という会員展があり、そこにたまたま立ち寄った。ろくろや型を使った作品の中、「SHOKKI」と同じ手びねりの作品があり、「ZAKKI」とタイトルが付けられていた。

腰を抜かしそうになった。

「うわ、これ絶対僕のSHOKKIを見て影響受けてる!」と思った。すごい笑えたし、めちゃくちゃうれしかった。

そもそもSHOKKI自体、自分のオリジナルではなく「誰かが作りそうなもの」を作ってる感覚で、しかもそんな名の知れた陶芸家でもないのに、おこがましくも誰かの創作意欲を掻き立て、真似をしてくれた。しかも器のかたちは、僕が作ったことないさんま皿みたいなもので、そこにZAKKIってタイトルをつけるなんて、もう最高だと思った。

陶芸というのは作家性の強い世界だからこそ、それとは違う方向のことをやりたいと思う。自分の強烈な個性を出すよりも、工業製品のようにぶっきらぼうで、匿名性のあるものをつくりたい。

と、言いながらも。スタッフがつくったものに、ちょいちょい手を入れて操作しちゃう自分もいて、作家性をどんどん消す方向にしようとして始めたものなのに、どんどん自分の個性を感じざるを得なくなってしまっているのだけれど。

PROFILE

SHOKKI | ハンドメイドセラミックレーベル

2013年にスタートしたハンドメイドのセラミックレーベル。「ま、いっか。」くらいの気楽さと自由さで、食器や花瓶、オブジェなど、1点もののプロダクトの企画と製造をします。

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